【マンガ】鉄腕ガール(高橋ツトム)【感想】
○あらすじ
戦後日本に誕生した女子プロ野球。そこにスカウトされた主人公、加納トメが様々な逆境と大勝負に「野球」で立ち向かってゆく。
○気に入った点
・主人公、加納トメが男女差別、人種差別、アメリカによる支配に身一つで立ち向かっていくさまが熱い。
・負ければ球団解散、勝てば18億ドルなどの大勝負においても全くぶれず、純粋な「勝負」としてそこに集中できる加納トメの姿にカリスマを感じる。かっこいい。
・演出がうまい。物語が大勝負に向かってうまく収束していっているので、 勝負が盛り上がる。
○気に入らなかった点
・野球を題材にしているが、作品のテーマが「勝負」なので野球の描きが薄い。薄すぎて、サッカーやバスケに置き換えても話が成立する。野球好きからするとかなり微妙である。「勝負」自体も、投手の加納トメと打者の相手だけで完結している。(1打席勝負やそもそも試合自体が投手の完全試合だったり)
・主人公があまりに人間離れしているため、主人公に感情移入し辛い。一応それぞれのシーンにおいて、読者に近い感覚を持ったキャラが登場する(タマコ、田中、はるか)が、全員が加納トメに心酔していて、客観的な視点に欠ける。全員がトメさんすげーっす、ってな感じでどうすごいのか誰も言わない。スラムダンクの小暮的ないないので、勢いだけで突っ走っている。
・勝負は気合と運、頭は使わない。勝負は基本的にすべて気合、運で行われているので、技の駆け引き、下準備等の戦略、裏工作は一切ない。ただし、対戦相手は仕掛けてくる。それでも加納トメは「純粋な気合」、「強運」ではねのける。勝負は知略、技巧を尽くした果てに、気合や運が出てこないと、ご都合主義にしか見えない。
・主人公はすべてセンスで問題を解決する。そもそも加納トメは、もともと何の練習もしなくてもプロ選手(黒沢)と渡り合う球速を持っていたし、約2~3週間の練習で海兵隊の野球チームを追い詰めることができる。いわば野球の天才。それに加えて、こちらももともと持っている肝のデカさ を兼ね備えているのである。つまり、これらのことから話が、「生まれついての天才が、常人にはできないすごいことをやっている」というだけの話になってしまっているのである。そりゃ一般人読者は感情移入できないですわ。
○総評
加納トメが熱血、カリスマ性、天才的野球センス、強運で立ちはだかる障害をねじ伏せ、大勝負に勝利する痛快な漫画。全9巻でサクッと読める。その反面、 努力シーン、戦略シーン、葛藤シーンがほとんど描かれておらず、「ご都合主義」感が半端ない。「こまけぇことはいいんだよ!」とはまさにこれのこと。
一直線なアクション映画が好きな人にはぜひおすすめ。
○作品データ
著者 高橋ツトム
巻数 全9巻
単行本第一巻 2000年4月発売
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