2016年3月10日木曜日

【ラジオ】町山智浩 なぜ映画を観るのか?どんな映画を観るべきか?【感想】

 鑑賞した作品について考えていると、「娯楽なんだからあんまり頭使わないで、楽しめよ」なんてことを言われたりする。これに対しては、「作品について頭使って、どこがどう面白かったのか、つまらなかったのかをしっかり考えるから鑑賞はおもしろいんじゃないか」と思っている。

 ちょうど映画評論家の町山氏がラジオで似たようなことを言っていたのでここで紹介しておく。



 

【マンガ】鉄腕ガール(高橋ツトム)【感想】


 【マンガ】鉄腕ガール(高橋ツトム)【感想】



○あらすじ
 戦後日本に誕生した女子プロ野球。そこにスカウトされた主人公、加納トメが様々な逆境と大勝負に「野球」で立ち向かってゆく。

○気に入った点
・主人公、加納トメが男女差別、人種差別、アメリカによる支配に身一つで立ち向かっていくさまが熱い。

・負ければ球団解散、勝てば18億ドルなどの大勝負においても全くぶれず、純粋な「勝負」としてそこに集中できる加納トメの姿にカリスマを感じる。かっこいい。

演出がうまい。物語が大勝負に向かってうまく収束していっているので、 勝負が盛り上がる。

○気に入らなかった点
・野球を題材にしているが、作品のテーマが「勝負」なので野球の描きが薄い。薄すぎて、サッカーやバスケに置き換えても話が成立する。野球好きからするとかなり微妙である。「勝負」自体も、投手の加納トメと打者の相手だけで完結している。(1打席勝負やそもそも試合自体が投手の完全試合だったり)

・主人公があまりに人間離れしているため、主人公に感情移入し辛い。一応それぞれのシーンにおいて、読者に近い感覚を持ったキャラが登場する(タマコ、田中、はるか)が、全員が加納トメに心酔していて、客観的な視点に欠ける。全員がトメさんすげーっす、ってな感じでどうすごいのか誰も言わない。スラムダンクの小暮的ないないので、勢いだけで突っ走っている。

勝負は気合と運、頭は使わない。勝負は基本的にすべて気合、運で行われているので、技の駆け引き、下準備等の戦略、裏工作は一切ない。ただし、対戦相手は仕掛けてくる。それでも加納トメは「純粋な気合」、「強運」ではねのける。勝負は知略、技巧を尽くした果てに、気合や運が出てこないと、ご都合主義にしか見えない。

主人公はすべてセンスで問題を解決する。そもそも加納トメは、もともと何の練習もしなくてもプロ選手(黒沢)と渡り合う球速を持っていたし、約2~3週間の練習で海兵隊の野球チームを追い詰めることができる。いわば野球の天才。それに加えて、こちらももともと持っている肝のデカさ を兼ね備えているのである。つまり、これらのことから話が、「生まれついての天才が、常人にはできないすごいことをやっている」というだけの話になってしまっているのである。そりゃ一般人読者は感情移入できないですわ。

 ○総評
 加納トメが熱血、カリスマ性、天才的野球センス、強運で立ちはだかる障害をねじ伏せ、大勝負に勝利する痛快な漫画。全9巻でサクッと読める。その反面、 努力シーン、戦略シーン、葛藤シーンがほとんど描かれておらず、「ご都合主義」感が半端ない。「こまけぇことはいいんだよ!」とはまさにこれのこと。
 一直線なアクション映画が好きな人にはぜひおすすめ。 
 
○作品データ
著者 高橋ツトム
巻数 全9巻
単行本第一巻 2000年4月発売

このブログの使い方について

 このブログは、「俺」が小説、実用書、映画、漫画等を鑑賞した際に、それらについて、ただ「おもしろかった」で終わらせず、しっかり考えるための場として開いた。
 またこのブログを読んでくれた方々に「俺」が感じた「おもしろさ」を伝播させられたらとも思う。
 一応、作品の紹介には作品の概要や画像を載せるのに便利であるという理由で、amazon等のリンクを張る場合があるが、このブログは商業目的ではない。ただし、伝播も目的としているので作品の入手窓口を近くに作っておくことは趣旨の範囲内と考えている。どうしても広告がうざい場合は、広告のブロックツールでも入れて読んでもらいたい。
 また、ブログ読者からの作品のおすすめにも期待しているので、コメント等でその旨を伝えていただければ幸いである。